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LNG⻑期契約「ほぼ完売」 急ぐ欧中、⽇本にも余波

世界各国が液化天然ガス(LNG)の⻑期契約を増やしている。ロシアによるウクライ
ナ侵攻を契機に、不安定なスポット(随時契約)での調達を抑え、安定調達を優先する
動きが鮮明だ。中国や欧州などが確保を急ぎ、既に2026年に供給を開始できる⻑期契
約は「ほぼ完売」。ここ数年、⻑期契約に慎重だった⽇本勢も戦略⾒直しを迫られてい
る。
エネルギー‧⾦属鉱物資源機構(JOGMEC)の調査によると、2022年に世界で最終
合意に⾄った新規のLNGの⻑期契約数量は年約5900万トンと、21年から27%増加し
た。契約期間も平均17年と、前年の12年から5年延びた。「侵攻を機にエネルギー安全
保障の重要性が再認識されたことが⻑期契約シフトの⼀因」(JOGMECの⽩川裕⽒)
だ。
ガス輸⼊の55%をロシア産に頼っていたドイツは、昨年11⽉末にカタールと15年間
の⻑期契約で合意し、26年から年最⼤200万トンの供給を確保した。ロシア産の6%を
置き換える量になる。
侵攻後、欧州がLNGの代替調達に動き、世界のガス市場のスポット価格は急騰した。
各国がガス確保を急ぎ、中国も昨年11⽉、カタールと「LNG史上最⻑の供給契約」(カ
タールのカアビ‧エネルギー相)となった27年間の⻑期契約を締結した。26年から年4
00万トンの供給を受ける。
LNGの最⼤の需要家である⽇本も⼤型契約に動いた。⽇本最⼤の発電事業者であるJ
ERA、三井物産、伊藤忠商事の3社は昨年末、中東のオマーンと10年程度の⻑期契約で
基本合意した。3社は25年以降、年235万トン程度を調達する。
⽯油‧天然ガス開発⼤⼿のINPEXも年100万トンの⽶国産LNGを27年から20年間購⼊
する契約を結んだ。侵攻以降、⽇本が結んだ⻑期契約では規模‧期間ともに最⼤とい
う。
⻑期契約の増加は、世界のLNG供給にプラスに働く。⼀般にLNGの開発は⼤規模な初
期投資と⻑い建設期間を必要とし、投資コストの回収にも時間がかかる。⻑期の購⼊を
保証してもらえると開発しやすい。
実際、旺盛な⻑期契約の需要を背景に⽶国では増産投資が相次ぐ。⽶国の天然ガス開
発会社のシェニエール‧エナジーやベンチャーグローバルといった企業が昨年相次ぎ開
発計画の最終投資を決めた。
ただ、調達競争が激化し、安定した価格で供給を開始できる⻑期契約は「2026年ご
ろまで売り切れに近い状況」(経済産業省資源エネルギー庁の早⽥豪⽯油‧天然ガス課
⻑)という。
エネルギーの⼤半を輸⼊に頼る⽇本はこれまで安定調達を重視して、各国の産ガス国
と⻑期契約を結び、スポット市場での調達はわずかにとどまっていた。ノルウェーの調
査会社のライスタッド‧エナジーによると、22年の⽇本のスポット調達⽐率は2割程
度。欧州では7割近くをスポット市場で調達し、昨年のガス⾼で欧州の電気代は⾼騰し
た。⽇本でも電気代は上昇したものの欧州ほど⾼騰しなかったのは、既存の⻑期契約が
「防波堤」になったためだ。

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