安定供給の前提は社会全体でつくる
これまでのような、発電所頼みの一方通行な電気の流れでは同じことの繰り返しです。
環境変化に左右されない安定した電気を確保するために、今後は双方向で電気のやり取り
ができるネットワーク型へと変わっていくことで、社会のあらゆる場所から電気を集めら
れるような仕組みができてくると思われます。そのための仕込みとして再エネ化が進み、商
業施設や家庭にも太陽光発電などが普及し、自治体でも水力やバイオマスなどの多種多様
な電力リソースを持つようになるでしょう。同時に、蓄電池ステーションも各所に普及して、
発電した電気を一時的に溜めておき、必要なタイミングで放電するような、電力流通のコン
トロール力も備わってくると思います。
電気は「買う」から「つくる」へ
これまでの常識では、需要家にとって電気は「買う」ものでしたが、今後は「つくる」
ものに変わります。地産地消のエネルギーが自宅や地域に循環します。
電気料金の値下げ合戦は終わり、需要家の努力で安くする時代へ
2016 年電力全面自由化以降、電気はバナナのたたき売りのように「安くてなんぼ」の
世界でした。しかし、小売電気事業者の周りの環境はここ数年で大きく変わり、これまでの
ような薄利多売では企業存続が危うく安定供給どころではありません。そのため、これから
は小売電気事業者が電気代を安くする時代は終わり、需要家が努力して消費電力を下げる
ことで安くしていく時代になります。節電割引がつくメニューも普及してくるでしょう。
エネルギー産業・通信産業・自動車産業は三位一体化
ネットワーク型の電力流通を構築するうえで、エネルギー産業・通信産業・自動車産業
は領域をこえて大きく関わりあっていくことになると考えます。それぞれの産業がネット
ワーク型に必要不可欠な技術や役割を持っているからです。実際、アメリカを代表する企業
の一つであるテスラはこの三位一体に取り組み始めています。もともとテスラは自動車の
販売から始まった会社ですが、現在は電気自動車・蓄電池・太陽光パネルの開発に注力して
おり、燃料のいらない電源によるマイクログリッド(分散型エネルギー発電)を実現するた
めの研究開発も行っています。
また、ここでの日本の課題は「資源の少なさ」です。太陽光や蓄電池などの原料は基本
的に海外に頼っています。日本の太陽光や蓄電池が海外製に比べ高価なのもこのためです。
そこで政府は蓄電池のリユース化について議論を進めています。現時点では蓄電池によっ
てリユースに向いているものもあれば、向いていないものもあり、安全性やその後の流通状
況も研究段階。これが進むと、リユース市場も活性化して新たな技術・新たな市場が生み出
されると思われます。